ビオディナミとは、栽培方法(農業全般や単純にガーデニングのことも指します)のひとつで、ビオロジック、エコロジックも含まれます。あまり予備知識のない人に対しては、 ナチュラルな « 対処法 » しか用いらないこと、とも説明できます。

まずは « ビオディナミ » の語源を理解することから始めましょう。これはギリシャ語の « 生命 » を意味するbios、 « パワー » を表すdunamis、という単語から来ています。つまりビオディナミ栽培とは、生命の持つ力を利用する方法と言えます。 プティ・ロベール辞書で « dynamique » という言葉を検索すると、 « 動きのある、変化していく物事として捉えられる » ともあります。ビオディナミに深く傾倒している人なら、このことには自然と気付くことでしょう・・・。

ルドルフ・シュタイナーが、農業従事者への講義で、ビオディナミ農法へのアプローチを初めて披露したのは、1924年のことでした。彼は、月の様々なフェーズ(段階)と農作業を結びつけるというアイデアを採り入れたのでした。その後に農場主たちが色々な実験に参加し、現在までに明らかになったことは、天体の動きと植物の成長の間には相関関係がいくつかあるということでした。

ビオディナミの基本

あえて言うなら、ビオディナミに使用される道具が2つあります : プレパラートとビオディナミ・カレンダーです。プレパラートは、ミネラル分と、植物成分または特定の動物成分、両方入る場合もありますが、これらを混ぜ合わせたものです。

プレパラートは水に溶いた形で、土壌そのものと栽培時の両方に対して、ホメオパシー的な香油のような使い方をします。カレンダーについては、月の様々なリズムや、天体のポジションなど、天文学の雑多なインフォメーションについてまとめたものです。

 写真は、ドメーヌが所有するピノグリの区画

カレンダーの記載事項について

地球の衛星としての月は、地上の水に対して強い引力を引き起こします(潮の満ち引きについて考えると簡単です・・・)。植物の大部分は水分で構成されており、満月の時期には、この引力が発芽力や成長力、そして吸水力のアップへと繋がります。つまり、種蒔きは満月の2日前に行うのが好ましいということになります。


月の出や月の入りをよく観察すると、年中同じ位置からではないことが分かります。

じつは、14日弱のサイクルで、月の出の位置と月の入りの位置は、徐々に離れていくのです。そうすると、天体に描かれる月の軌跡は大きくなっていきます。上弦の月とか上りの月というのは、この軌跡が少しずつ高くなっていくときです。軌道が小さくなっていくときは、下弦の月です。上弦の月の間は、植物の樹液が上がる力も強くなります。

春から夏にかけては、植物の « 空気に触れる » 部分、つまり地上部分にエネルギーが集中します。一方で、下弦の月のときに、エネルギーが植物の地中部分に集中するのは、秋から冬にかけてと同じことです。つまり理想的なのは、果実や花や葉をつける植物に関しては、できるだけバイタリティを引き出し、その後の長期保存を最大限に可能にするため、上弦の月で収穫を行うことです。根菜の場合は(ニンジン、ビーツ、オニオンなど)下弦の月で収穫するほうが好ましいです。この時期は、移植や植え替えにも最適な時期で、根がしっかりと張ってくれます。

このような月の持つリズムは、恒星時(星に関わる)リズムと呼ぶこともできます。月は地球の周りを回転しながら、1ヶ月で12星座を通り抜けますが、同様に太陽の周りを1年で回っています。つまり恒星時リズムとは、月が同じ星座の前を繰り返し通過する一周期のことをいいます(sidéral =恒星時という形容詞は、ラテン語のsiderisという星に関連する言葉から来ています)。12星座は4つの要素によって分けることができます : 地、水、風、火です。例えば、月が風の星座を通過しているときは、風の要素に関連するパワーが地球に伝わります。マリア・トゥーンが行った数々の経験則や観察から、現在では4要素のパワーが植物に及ぼす影響の現れ方も分かっています。月が地の星座(牡牛座、乙女座、山羊座)を通るときには、植物の持つエネルギーは根に向かいます。水の星座(魚座、蟹座、さそり座)のときは、エネルギーは蔓や葉に向かいます。風の星座(水瓶座、双子座、天秤座)であれば、力は花の部分に伝わります。そして最後に、火の星座(牡羊座、獅子座、射手座)を月が通過しているときは、実を結ぶことに優勢な推進力が向かいます。



写真は、冬季のドメーヌの畑のひとつ

こういった理屈も良いのですが、具体的には何ができるでしょうか? 私たちが植物を育てるとき、大抵は一部(場合によってはもっと・・・)を消費することを目的としています。例えば、ニンジンであれば根の部分を食べ、インゲンなら実の部分、ブロッコリーは花、ホウレン草は葉の部分を食べます。宇宙のパワーを利用して(58年以上も前から数々の経験則により証明されてきたことです!)、野菜やその他の植物のクオリティを向上させたいのであれば、植物の部位に相対した日取りに合わせて、土壌づくり、種蒔き、移植、植え替えなどの作業を理想的に行うべきです。では、ラディッシュの種蒔きをするのに、月が地の星座にあるのを知るには、どうしたら良いのでしょうか? ビオディナミ・カレンダーを入手すれば、月の運行リズムがすべて示されていて、その他にも惑星の結合や、日蝕などについての記載もあります。なぜなら、植物の成長にとってポジティブまたはネガティブな影響を及ぼす要素は、他にもあるからです。

あなたがこういった事に興味を持たれて、もっと深く知りたいと思われたら(私はほんの軽く触れただけです・・・)、お勧めしたいカレンダーが2種類あります :  le Calendrier lunaire (calendrier lunaire diffusion 発行)、そしてマリア・トゥーンの le Calendrier des Semis (コルマールにあるLa Maison de la Bio-Dynamie 発行)です。いずれもとても興味深い本で、幅広い情報がたくさん詰まっています。

写真は、ドメーヌの畑に咲くタンポポの花にやって来たミツバチ

Demeter とは?

ギリシャ神話では、デメテルとは肥沃をつかさどる女神で、発芽、主には小麦の発芽を守っていました。その他にも、宇宙進化論の女神、あらゆる花と果実など地上にある生命が、デメテルと彼女の影響下におかれていました。
植物ベースの肥料と、ドメーヌの畑に種蒔きした花を混ぜたもの。ここはシルヴァネルの区画